オフラインマーケティング
公開日: 2017-11-22
オンライン広告全盛時代になぜ?屋外広告が“熱い”ワケとは?
マス4媒体と呼ばれるテレビ、新聞、雑誌、ラジオの広告売上高が縮小し、Web広告市場が飛躍的に伸びる昨今、OOH(out of home media)と呼ばれる屋外広告が意外な健闘を見せていることをご存じでしょうか? 2016年3月に電通から発表された「2015年日本の広告費」によれば、屋外広告の総広告費は、3,118億円と前年比で増加しています。この好調の要因を国内外の屋外広告事例から読み取ってみましょう。
思わず足を止めてしまうしかけ
Web広告全盛時代に、いまだその価値を発揮し続ける屋外広告の魅力は何でしょうか? いくつか整理してみました。
1. 思わず足を止めてしまうしかけ
屋外広告が掲載される場所は、主要ターミナル駅の通路など、人の往来が期待できるところに限定されます。JR東日本が2014年に発表した各駅の乗車人員のランキングによると、1位である新宿駅の乗車人員は、75万人弱となっています。これは、JRのみの乗車人員であり、新宿駅には、ほかに地下鉄や私鉄が乗り入れていることを考えると、かなりの数の人が駅を利用していることがうかがえます。
このような利用者の多い場所に、一定期間、広告を掲載できることは、リーチ(どのくらいの人数に広告が届くか)とフリークエンシー(どのくらいの頻度で広告に接触するか)という広告効果を測る指標において、高い効果が期待できるのです。
特に、新宿駅の通路のように人通りの絶えない場所に掲載される広告は、計り知れない効果を持っています。例えば宝島社による『モンスターストライク攻略BOOK』シリーズのピールオフ広告のように、瞬く間に消費されてしまうケースも少なくありません。この屋外広告では、ポスターに3,000枚のチケットが貼り付けられ、そこにはゲーム内で使用可能な特別なアイテムが入手できるシリアルコードが記載されていました。また、チケットがすべて剥がされるとレアアイテムがもらえるシリアルコードが出現する仕掛けになっており、SNSで拡散されるなど大きな話題になりました。
2. 街のすべてがメディアになる?
屋外広告は、長いものだと横幅が10メートル以上に及びます。また通路だけではなく、建築物の形状を活かした個性的な制作物を創ることができます。テレビやラジオは時間、新聞や雑誌には、紙面サイズという物理的な制約がありますが、屋外広告では、その制約を超える方法がいくつかあるのです。また、さまざまな素材を使えることも、屋外広告にクリエイティブな性格を持たせています。
極端な事例としては、IKEAの生きた広告が挙げられます。この事例では、IKEAの家具に囲まれて暮らす人を屋外広告として掲示することで、多くの人の注目を集めることに成功しました。こうした挑戦的なプロモーションは、屋外広告ならではのものといえるでしょう。
3. “そこのあなた”だけに届く限定メッセージ
例えば、特定の大学の学生に向けたメッセージを送りたい場合、大学の最寄り駅で交通広告を展開するなどの手法が考えられます。このように、屋外広告を展開する場所を考慮することで、特定のターゲットにメッセージを届けることもできるのです。
清涼飲料水「glaceau vitaminwater(グラソー・ビタミンウォーター)」は、さまざまな場所でそのエリア限定のメッセージを発信して話題を呼びました。例えば、若年層が多く行き来する渋谷109前交差点には「未成年でも飲めます。」という看板を、また、福沢諭吉が創設した慶應義塾大学の学生で賑わう三田慶應通り交差点には「学問(しながらグラソー)のすすめ。」というメッセージを掲げて、それぞれのエリアに合わせたメッセージを伝えました。
4. 屋外広告から始まる「続きはWebで」
さらに屋外広告には、Webサイトにアクセスしたくなるような仕掛けを設けることも可能です。文具、事務製品の製造・販売を手掛けるコクヨS&T は、屋外広告とWebを連動させたキャンペーンを実施しました。
このキャンペーンは、東京藝術大学の学生が、ガムテープを使用してアート作品を制作するというもの。その制作過程をWebサイト内のブログやYouTubeなどでレポートしたのです。さらに、Twitterでは制作している学生たちへの応援メッセージを募集し、盛り上がりを見せました。
Webが変える、屋外広告の進化
AR(拡張現実)を取り入れた屋外広告もすでに登場するなど、Webの進化は、屋外広告の可能性を広げます。屋外広告自体は、掲載された場所から動かすことはできません。しかし、掲載されている場所を中心として、Webを利用した情報の拡散やほかの媒体との連動が可能になります。屋外広告という「点」でのコミュニケーションが、Webによってほかのメディアと連動することで、「線」になり、さらには「面」となるのです。
このように、Webと連動することで、屋外広告の存在価値はさらに強いものとなっています。実際に、人々が見て触れる仕掛けは、屋外広告にしかできないコミュニケーションの方法といえるでしょう。
屋外広告は広告を超えた広告
道頓堀にあるグリコのネオンサインやニューヨークのタイムズスクエアに掛けられたグローバル企業の屋外広告。屋外広告は、街の風景の1つとなり、文化の象徴でもありました。ほかの広告ではできない、人々に驚きを与えるようなクリエイティブが実現できる、またWebと連動することで、屋外広告を起点として人々と企業がつながりを持てることは、この先も決して色あせることのない魅力でしょう。Webのテクノロジーが発展を続けるこの先、どのような進化を遂げていくのか、目が離せません。