自社の商品プロモーションにおいて、オリジナルグッズの提供や海外旅行プレゼントなどのキャンペーンを実施することは、今でも購買促進の有効な手段のひとつです。長年続いているキャンペーンや、グッズのオリジナル性などが話題を呼んで、良好な購入サイクルが生まれることも珍しくはありません。
さて、消費者に対して、製品とは異なるプレゼントを付帯させるキャンペーンは、景品表示法(景表法)という法律によって、その内容が規定・規制されています。そのため、企業は一定のルールのなかでキャンペーンを組み立てていく必要があります。
もしそのルールを遵守しなかった場合、該当商品や担当者だけではなく、企業としての信頼にも傷をつけてしまう可能性があります。オリジナルグッズやキャンペーンの内容の決定に労力を割いて、せっかくいいアイデアが生まれたのに、景表法を遵守しなかったために、すべてが台無しになるような事態は避けたいもの。今回は、そうならないために担当者が知っておくべき基本事項をお伝えします。
「景品」という言葉を聞くと、つい物理的な物体を想像してしまいがちですが、景表法における「景品」の定義は、意外に広範です。消費者庁のホームページに掲載されている景品類の定義は、以下のようになっています。
(1) 顧客を誘引するための手段として、
(2) 事業者が自己の供給する商品・サービスの取引に付随して提供する
(3) 物品、金銭その他の経済上の利益
この定義によれば、海外旅行や、観劇への招待なども景品に含まれます。またポイントやスクラッチカードなど、間接的に経済上の利益がもたらされるものも、景品に該当します。モノではないので景品に該当しないと考えるのではなく、顧客を誘引するための商品やサービスは、基本的にすべて「景品」に該当してくると考えておいたほうが無難です。
景表法で定められている景品は、実施するキャンペーンによって上限金額が定められています。まずキャンペーンは、大きく2つに分けることができます。
オープン型のキャンペーンとは、商品を購入する、お店に来店することが条件にはなっていない、誰でも応募することが可能なキャンペーンです。消費者に対して、商品の購入を条件にしていないので、その上限は、2006年の4月に撤廃されました(撤廃前は、最高で1,000万円まで)。
クローズド型のキャンペーンは、そのキャンペーンを行っている企業の商品購入やサービス利用などが、前提条件となります。このタイプのキャンペーンは、その種類によって3種類の懸賞パターンに分けることができます。
ちなみに「懸賞」とは、消費者庁のホームページによれば、抽選やじゃんけんなどの偶然性、クイズへの回答の正誤、作品の優劣の方法によって景品類の提供の相手方または提供する景品類の価額を定めることをいいます。つまり、景品類を差し上げる側が一定の条件を出して、その条件に見合った応募者を評価、選別したうえで、「賞」として景品類を提供するものを「懸賞」と呼びます。
一般懸賞とは、商品やサービスの利用者に対して、クジや抽選などの偶然性や特定行為の優劣などによって、景品類を提供することです。特定行為とは、例えば、商品を買って応募するといったものだけではなく、ゲームの得点やスクールへの出席、ポイントの収集なども該当します。その優劣(ポイントが多いのか、得点が高いのか、シールを何枚集めたのか)によって、応募できる商品ランクが決定されてくる懸賞は、みなさんも目にされたことがあると思います。
景品の限度額は、懸賞による取引価額(商品やサービスの値段)で決まっています。取引価額(商品やサービスの価格)が、5,000円未満の場合は、景品類の最高額は、取引価額の20倍までです。例えば、1,500円の商品であれば、30,000円までの景品を用意できます。また5,000円以上であれば、最高額は100,000円と決まっております。景品類の総額は、懸賞に係る売上予定総額の2%となっています。
共同懸賞で最もわかりやすい事例は、地域の商店街の福引です。商品やサービスの利用者に対して、一定の地域や業界の事業者が共同して景品類を提供するのが共同懸賞です。この場合、景品類の最高限度額設定はシンプルで、取引価額にかかわらず300,000円。総額は予定売上総額の3%となっています。
総付景品とは、商品やサービスを利用した人、来店した人全員に、景品類を提供することです。ベタ付けという言い方もされます。飲料を購入した際に、ペットボトルに袋付けされているキャラクター人形を見たことがある人も多いと思います。また、来店すると加算できるデパートのポイントや、もれなくもらえるキャンペーンの景品なども、こちらに該当します。
こちらも限度額の規定はシンプルで、取引価額が1,000円未満の場合は景品類の最高額は200円、1,000円以上の場合は、取引価額の10分の2となります。
以上、キャンペーンの担当者が景表法のなかで必ず知っておくべき内容をお伝えしました。景表法は、消費者を守ることを目的としているため、キャンペーンを実施する事業者に故意や過失がなくても、違反者には措置命令が出されることとなります。措置命令の内容としては、例えば、違反したことを一般消費者に周知徹底することや、再発防止策を講ずることが挙げられます。
販促担当者にとって最も身近で、なおかつ確実に内容をおさえる必要のある法律のひとつが、景表法です。各懸賞の種類と、その具体的な上限金額を把握することで、販促活動の実施におけるリスクをなくすことができます。思わぬ部分で足元をすくわれないように、充分に留意しておくことが必要です。