営業活動において重要なのは、相手のニーズを把握して、それを満たす提案をすることです。自社商品のメリットを一方的にまくし立てるだけの営業トークでは、契約を勝ち取ることは難しいでしょう。ニーズを的確に把握できるかどうかは、提案が成功するかどうかのカギといえるのです。
では、どのようにして、ニーズを把握すればよいでしょうか。答えは、「質問力を身につけること」です。当然ながら、相手のニーズは相手のなかにしかありません。それを質問によって効果的に引き出すことが重要な営業テクニックといえるのです。
ここでは、基本的な質問テクニックと、信頼関係を構築して相手のニーズを把握するための実戦テクニックを解説していきましょう。
これだけは押さえておきたい!基本の質問テクニック
確実に押さえておきたい、基本的な質問テクニックから解説します。これだけでも、これまで質問をあまり意識してこなかった人にとっては効果を実感していただけるでしょう。
まずはじめは、その質問によって何を得たいのかゴールを設定することです。一口に質問といっても、情報を得る、不明事項の確認をする、仮説を確認するなど、さまざまな目的があります。質問をすることによって得たい情報を明確にすることが、質問戦略の第一歩となります。
目的がはっきりしたら、それにもとづいて事前準備をしましょう。当然ながら、何を質問するかがわかっていなければ、質問はできません。現場で質問が曖昧になってしまうのは、事前に質問を考えていないからです。必ず、事前に質問をリスト化しておきましょう。
最後の基本テクニックは「広く聞いて、深く掘り下げる」ことです。質問する相手との関係性の度合いにもよりますが、はじめから踏み込んだ質問は不快感を与えることになりかねません。広く聞いて深く掘り下げていくことで、相手に不快感を与えず、自然な会話ができます。
広く聞くには、「オープンクエスチョン」が有効です。これは、質問された相手が自由に回答できる質問です。
そして、深く掘り下げるには、「クローズドクエスチョン」を活用するといいでしょう。これは逆に、答えが限定される質問を指します。
例えば、「休日には何をして過ごしたいですか?(オープンクエスチョン)」→「うーん。スポーツでリフレッシュしたいですね」、「スポーツは何をしたいですか?(クローズドクエスチョン)」→「テニスです」、といった流れで会話をすることで、徐々に踏み込んだ質問ができるようになるのです。
これらの基本テクニックが理解できたら、いよいよ実戦テクニックをみていきましょう。
相手のニーズを引き出すための質問テクニックは、「信頼関係を構築するフェーズ」と「実際に質問によってニーズを引き出すフェーズ」の二段階で構成されます。
この順番には意味があります。質問がうまくいかない人は、信頼関係ができていないのに、相手の本音を引き出そうとズケズケと質問を重ねてしまう傾向があるのです。相手が心を開いていない状態で、本音を引き出そうとしても、相手は口を閉ざしてしまうでしょう。逆にいうと、信頼関係が作れていれば、ニーズを引き出すための質問は驚くほどスムーズに進行できます。
ラポールとは、「心の架け橋」という意味です。相手と心の架け橋でつながっている状態、つまり、信頼関係ができている状態を指します。営業マンにとって、相手とラポールを築けるかどうかはとても重要です。
ラポールを築くためには、ミラーリングやペーシングといった技術がありますが、質問も効果的です。なぜなら、相手にいかに「共感」を示せるかが、ラポールを築くためのポイントとなるからです。例えば、以下のような会話をみてみましょう。
A:「普段はどんなお仕事をされているのですか?」
B:「部下の営業指導をしています」
A:「部下の方は何人いるのですか?」
B:「50人です。とても大変ですよ」
A:「へぇー、それは大変ですね!(共感)」
このように、相手への共感を示すことはラポールを築くうえで非常に重要なことなのです。
会話をうまく進めるコツは、相手の現状や過去の取り組みについて、失礼にならない程度にたくさん質問することです。人は、自分の話をしたい傾向があります。共感してくれる相手ならなおさらでしょう。そのなかで共通点を発見できれば、よりラポールは強固になります。
それでは、提案の精度に直結するニーズを引き出すための質問テクニックを解説していきましょう。繰り返しになりますが、相手とラポールが築けていることが前提となります。相手のニーズを引き出すための質問は、以下の3つのフェーズに分かれます。
1. 現状質問 ~相手の「今」を把握する~
一つ目が「現状」に関する質問です。現状はどんな取り組みをしているのか、どんなことに困っているのか、どんなことが成功しているのか、それらをしっかり質問します。
例)「御社では、どのような販促をされていますか?」→「応募型キャンペーンが多いですね」
2. 未来質問 ~未来のあるべき姿を知る~
二つ目は、「未来」に関する質問です。現状を踏まえて、将来はどのようになりたいのか、どうなれば成功といえるのかを引き出します。意外にも、相手が未来像を明確にしているケースは少なく、質問することで明確化され相手に喜ばれるケースもあります。
例)「今後は、どのような施策をお考えですか?」→「応募キャンペーン以外にも、さまざまな施策を展開したいと思っています」
3. ギャップ質問 ~「今」と「未来」の間にある障壁は何か~
三つ目は、現状と未来像とのギャップの確認です。また、どのような取り組みをしているかも質問していきます。このギャップが相手のニーズとなりますので、重要な質問です。
例)「では、どんな施策をされる予定なのですか?」→「応募キャンペーン以外に、何をすればいいかわからないんだ」
このように、現状から未来、そして、そのギャップを確認する質問をすることで、相手のニーズが徐々に浮き彫りになってきます。ポイントは、しっかり相手の話を聞くこと。現状質問の段階で、ニーズが見えてくることもありますが、口を挟まずしっかり聞きましょう。ビジネスは、早押しではありません。早とちりしてニーズを間違えてしまうと、質問の効果がなくなってしまいます。
質問力の理論は、とてもシンプルです。しかし、実際に身につけるには、何度も繰り返して練習する必要があります。初めから、スラスラと質問ができる人は、少ないでしょう。しかし、質問力を一度身につければ、精度の高い提案ができるようになり、大きな成果が生まれるでしょう。