プロモーションの手法は、目的に合わせて選定していくべきです。手法の選定にばかり目がいってしまって、手法の選定そのものが目的になってしまっては意味がありません。手法そのものが目的になってしまうと、本来の主旨に外れたプロモーションとなり兼ねないのです。
しかし、目的別にプロモーション手法を選定することが重要だとわかっていても、理論だけではなかなか理解できないという人もいるでしょう。そこで、本記事では、ブランディング系のプロモーション、集客系のプロモーション、購買促進系のプロモーション、という3つの目的から、話題になったプロモーション事例と、企画に当たってのポイントを解説。目的に対して、どのようなプロモーションが実施されたか、どうしてそのようなプロモーションとしたのかを分析しました。話題になった事例を楽しみながら、どのように目的に応じて手法を選定していけばよいかがわかるので、これからプロモーションの企画をしていく際に、役立てていただけるでしょう。
商品・サービスの強みを、いかに訴求していくかがポイントとなるブランディング系のプロモーション。強みを一方的に伝えるのではなく、ユーザーの立場に立って、企画をしていくことが重要となります。
話題性を喚起できれば、商品・サービスをより強く、広範囲に訴求できるでしょう。この分野は、動画やVR、SNSなど、さまざまなプロモーション手法が開発されていますが、トレンドを追いかけるのではなく、本来の目的を見失わずに、自分たちにとって必要な手法を選定していくことが大切です。
フルーツを切ったら、まさかの切り口。アイデアとは掛け算だということを証明してくれるプリント広告
思わずガムを食べたくなるプリント広告が、中国で展開されました。イチゴやレモンといった果物をカットすると、切り口がガムのように伸びていきます。果物の新鮮さをそのままガムにしたことを表現した、斬新なビジュアルのフルーツガム広告です。
ポスターを利用し、ビジュアルで商品を訴求するシンプルな手法です。手法はシンプルながら、インパクトは大。新鮮な果物をガムにした、という強みをストレートに訴求しています。商品訴求は、手法にこだわるのではなく、その商品価値が最も伝わるアイデアを企画するのが重要であることがわかる事例です。
「もう怒りが収まらない・・・」ごく普通のOLがオフィスで荒れ狂うKIWIのWeb動画
日本人の「働きすぎ」をモチーフにした、おもしろ動画。SCジョンソンのシューケアブランド『KIWI」が実施しました。真面目なOLが、終業間際に大量の資料を渡されてついに怒りが爆発。上司の顔面に、切れ味鋭い見事なキックを炸裂させます。そのあと、怒りが収まらないOLに、同僚や先輩も巻き込まれていきます。
動画全盛の現在、会社や機能の紹介に終始するだけのコンテンツでは、なかなか視聴してもらえません。このような、誇張によるインパクトで商品訴求する表現方法も検討の余地があるでしょう。
店舗や展示会などへの集客を目的としたプロモーションを紹介しましょう。集客をするためには、ユーザーに行動させるだけのメリットを用意する必要があります。モノあまりの時代において、安易なインセンティブでは、人に行動を起こさせるのは難しいでしょう。ヒントは、モノだけではなく「体験」をセットにすることです。ほかではなかなか味わえない、ユニークな体験をメリットとしたプロモーションなら、「行ってみよう!」という気持ちを引き起こせる可能性が上がります。
サガプライズ!|おどろきの佐賀、ぞくぞく。
地方創生は、現代日本の重要課題となっています。そんななかで、佐賀県では、「サガプライズ!」と称し、企業・ブランドとコラボして、活動から得られた知見・手法を地域にフィードバックする地方創生プロジェクトを展開しています。
今回紹介する取り組みは、人気ゲーム「Splatoon(スプラトゥーン)」とコラボした「Sagakeen(サガケーン)」。ゲームの主人公がイカであることと、佐賀県の名産のひとつがイカであることから、佐賀県の魅力が発信できるとコラボを決定。東京タワーと、地元の佐賀県でイベントを展開しました。遊覧船をラッピングして「スプラ丸」として提供、そして、コラボグッズの販売、スタンプラリーなどを実施したそうです。
当日のイベントには、1万人以上の方が参加したそうです。イベントを実施した呼子エリアの人口が約4,900人なので、人口の2倍以上の人が訪れるという結果となりました。
コラボ先の魅力を最大限に引き出して、地域の魅力を訴求したプロモーションの好例といえるでしょう。訴求したいメッセージが明確で、イベントを一過性のプロモーションに終わらせず、イベント後も佐賀県の魅力が記憶に残る仕掛けとしています。
トヨタ自動車では、「すべての悩めるしずかちゃんへ」として、20才以上の女性限定で、LINEで人生相談を受け付けるキャンペーンを展開しました。人生の先輩(有名タレント)が、女性向けの乗用車「PASSO」で駆けつけ、相談に乗ってくれる仕掛けとしています。選ばれた相談が東京の場合は、先輩が車に乗って向かえに来てくれて、「ドライブ相談」が始まります。
話題を喚起していくブランディングの要素が強いプロモーションですが、若者の車離れが進むなかで、「ドライブ相談」と称して、訴求したい商品に乗車してもらうことに成功しています。商品価値をストレートに訴求するのではなく、商品の強みを体験というコンテンツにして、見事にターゲットを捉えており、集客プロモーションにおけるヒントになるでしょう。
商品・サービスを実際に購入いただくための購買促進系のプロモーションです。マストバイキャンペーンが展開されることが多いですが、インパクトのあるプレゼントを用意することで、思わず商品に手が伸びる企画が展開できます。
リオオリンピックのスポンサーでもあるKellogg’s社では、リオオリンピックに出場する選手とのアクティビティに参加できるようなマストバイキャンペーンを展開しました。また、SNS上でハッシュタグ「#GreatStarts」にて、動画・写真投稿キャンペーンも同時に実施しました。
このキャンペーンは、マストバイとSNSキャンペーンを単体で実施するのではなく、店頭とSNSとを連動させることで、両方のキャンペーンの認知、参加促進を促す工夫をしています。消費者の購買動線が複雑になるなかで、訴求に当たってもチャネルの連動は重要なテーマといえるでしょう。
Coca-Cola Canadaでは、欧州で生まれた世界最大手の音楽ストリーミングサービス「Spotify」を利用したキャンペーンを実施しました。
コーラと音楽を組み合わせたキャンペーンは日本でもおなじみですが、Spotifyというところがなんとも欧米らしい仕掛けといえます。音楽に限らず、スタンプや動画などのデジタルコンテンツは、多数のインセンティブを提供したいときには検討の価値があるでしょう。
国内外のさまざまなプロモーション事例を紹介しましたが、参考になった事例はあったでしょうか。大切なのは、事例をそのまま真似ることではなく、あくまで参考とすることです。まずは自社が何のためにキャンペーンを実施するのかを明確にしたうえで、参考となる事例を集めてイメージを膨らませてみましょう。その過程で、自分たちにとってどのような手法がマッチしているかが、徐々に見えてくるはずです。